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【プルマガα】海外の国内不動産取得がアベノミクス前に後退の理由(寄稿73回目)

Posted on 2017年06月6日


2016年海外資金の国内不動産取得額は前年比3割減の6000億円でした。

2014年から半減して、2012年水準も下回り、アベノミクス開始以前の取引水準に戻っています。
2016年初より円高ドル安推移は米ドル建てで日本の不動産価格は高値更新しました。

それが、海外資金にとって視ると、2016年以後も日本の更なる高値不動産(首都圏)を追っかけ取得が難しかった=既に価格のピークとみられます。
既に日本が収益不動産の価格サイクルの停滞期に入っているとの見方もできます(海外視線も価格が高過ぎるのです)。


(1)2016年の国内不動産取引額は2年連続の減少でした。
一方で、Jーリートや私募リートによる取得額は増加しましたがその他の海外資金などによる取得額が著しく減少しました。

(2)海外資金による国内不動産取得額を部門別にみると、大幅に増加した物流部門を除いて、多くの部門で2015年の半分に満ちませんでした。

(3)海外資金による不動産取得エリアについては、東京の占める比率が大幅に縮小しました。
また、海外資金の出所別で視ると、今迄のアジア資金による取得額減少が2016年に目立ちました。

(4)今も尚、国内の不動産価格動向は方向感が未だ掴み辛い状況となっていて、引き続き不動産価格変動の原動力になることが多い海外資金の動向に、十分に注意する要が在ります。


ご承知の通り、不動産取引額は、資市場の活力を表すものであり、価格変動サイクルの先行的指標と考えることも出来ます。
2016年の国内不動産取引額は、4年ぶりに減少した2015年に続く2年連続の減少となりました。
理由は、2015年真夏に中國経済の失速懸念が高まって以降、日本国内の不動産投資市場でも不透明感が漂う状況が続いて、ゆえに不動産投資市場の活力も低下しています。

ただし、2016年11月のトランプ大統領誕生以降に金融市場で強気な動きが目立っていて、3月も大統領の施政演説以後も市場の強気が続いていますので、今後は日本不動産投資市場にも明確な影響が及ぶのかどうかが注目されます。
海外の政治的な動静次第で日本の経済が影響されること自体が良しとは言えませんが、日本の現実です。

アベノミクスの開始以降急上昇した不動産価格は、2016年に高値圏で横ばいに為り推移しました。
また不動産投資の期待利回りも、既にリーマンショック前の2007年時点を下回る歴史的な低水準に在ります。
このように、日本の不動産価格サイクルのピークが今だと意識される中では、積極的に高値買付の動きが2016年に控えられました。

また、マイナス金利政策が続いて逆に売却利益の運用手段も乏しい現状の中で、積極的な売却姿勢も影を潜めて、不動産市場に出る売却物件そのものが不足したことも不動産取引額の減少に繋がったと視られます。

この様な市場の中で売手と買手が共に積極的取引を控えたにもかかわらず、2016年の国内不動産取引額減少は限定的でした。
これは、不動産市場を介さない上場企業からの取得が多いJリートが、2016年も取得額を増加したためでした。
その年間取得額は過去3番目に高い水準でした。

また、銀行等の機関投資家の新たな投資手段として人気を集めている私募リート(非上場不動産投資法人)も、Jリートと同様に企業からの直接取得によって取得額を増加していました。

一方で、市場がアベノミクス開始以前の状況に戻っており、不動産仲介会社の媒介や入札などによる開かれた投資市場の停滞が顕著と言えます。

2016年2月にマイナス金利政策が導入され、不動産投資市場への新たな余剰投資金の流入と、更に不動産取引額の拡大が期待されました。
しかし実際のところ、マイナス金利政策は先般ご紹介の通りに、富裕層の相続税の節税を目的の賃貸アパート建設を急増(2017年1月以後もなお)させましたが、必ずしも広く全般的に不動産投資市場組そのものを活性化するものでは在りませんでした。

初のマイナス金利政策が、馴染みのない政策として市場の混乱を招いて、資産運用利回りや、金融機関の収益力低下をさせるとのデメリット(銀行が収益悪化すると融資姿勢が一変して渋り出します)が意識されました。
不動産投資は活発化せずに、そして長期金利が大幅に低下した一方で、不動産投資の投資家が期待する利回りはわずかな低下に止まり、不動産投資の期待が薄れる形となっています。

2015年より、そして2016年に目立ったJリートや私募リート以外の不動産投資主体の中では、不動産価格が別の要因で大きく変動する原動力になることが多いのが海外資金の動向なのです。

2016年の海外資金による日本国内の不動産取得額は、前年比3割減の約6000億円でした。
直近のピークの2014年からほぼ半減して、2012年の水準も下回るなど、アベノミクス開始以前の取引水準に戻っています。
2016年の大半は、年初より為替相場が円高ドル安で推移して、米ドル建てでみた日本の不動産価格は高値を更新し続ける状況でした。
そのため、海外資金にとって視ると日本のさらなる高値の不動産(首都圏)を追いかける形での取得は難しかったとみられます。

また、2013~2015年には6000億円超える巨大取引が、海外資金による取得額を膨張させましたが、2016年には、そのような例外的に大規模な取引はみられませんでした。
加えて、2016年には、100億円を超える大規模な取引事例は7件で2015年の12件から大きく減少していました。

2016年の海外資金のホテル取得額は大幅に減少しました。
2016年には、急拡大してきたインバウンド宿泊需要が減速して、ホテルの新規供給の増加や新たな民泊施設との競合などで、ホテル市場の今後の需給懸念も顕在化してきました。
ただし、国内では依然としてホテル投資に対する強気な見方は多くて、2016年の国内のホテル取引額はJリートの取得が市場牽引する形で増加していました。

その国内でのホテル投資に楽観的な見方に反し、海外では日本のホテル市場をより慎重にみている可能性も在りそうです。
今後の海外資金によるホテルの取得動向には、なお一層の注意が必要です。
その一例として、今年の沖縄のホテルの海外資金の動静がぴったり止みました。

また、伝統的な不動産投資対象であるオフィス・テナント部門も、終焉不動産のサイクルが明確に表れていました。
2016年の海外資金によるオフィスの取得額はアベノミクス政策2012年の水準も下回って、既に不動産サイクルの停滞期に入っているとの見方もできます。

一方で、 5大都市圏(東京、大阪、名古屋、福岡、札幌)以外の地方都市での取得額が増加していました。
地方都市での取得増加については、大半は郊外あるいは地方に立地する物流施設の取得額が増加(ネット通販拡大等を背景)したためと言えます。

しかし、その他の部門でも、利回りの低い東京都心での取得を断念して、少しでも高い利回りを求めて郊外や地方での取得を増やすケースが少なく在りませんでした。
2007年にも地方都市での取得が増加していましたが、当時以上に既に人口が減少している地方都市においては中長期で視て若干の投資リスクが高まっていることに少々注意が必要と想います。

海外資金による国内不動産取得額を資金の出所別で視ると、まず最大の比率を占める米国資金が落ち込んだ2015年に続いて、2016年の取得額もやや減少したものの、全体に占める比率は持ち直していました。

一方で、アジア資金による2016年の取得額は、2015年に中国による目黒雅叙園の1170億円の取得という例外的巨大取引があった反動も在って、大幅な減少と為りました。
ただし、米国資金もアジア資金ともに取得額が直近ピークであった2014年からほぼ半減しています。
凡そ、海外資金による日本国内不動産取得は、資金の出所にかかわらず減少したと言えます=海外視線も日本の価格が高過ぎるのです。

今までの不動産投資の枠にとらわれない目線で不動産投資を再考し、オーナー利益の最大化を目指します。
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