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【プルマガα】Jリート間の売買で鑑定価格の乖離が出た理由が…なんと(寄稿83回目)

Posted on 2017年07月21日


Jリート不動産投資信託による収益不動産物件取得額が依然として高水準を維持し、日本の不動産売買市場の存在感が一段と高まっています。

2016年の規取得額は前年比11%増加して約1.7兆円で、2017年3月期は約5600億円となり前年同水準を確保しました。

都市未来総合研究所の「不動産売買実態調査(2016年)」によると、国内の不動産売買額が2年連続で減少(海外投資家の取得が減少し、10月より更にアメリカの政治動静で円安になり日本の物件取得額が割高に為りました)する中で、その国内での買主としてのJリートのシェアは45%に上昇していました。

ところで、Jリートもファンドも物件の売買に際して取引価格の妥当性などを投資家や銀行に説明する為に、欧米流の不動産鑑定士による鑑定評価額を開示しています。

その為、購入価格が鑑定価格を下回ると、投資主としても何だか得した様な気分になります。
実際に含み益の増加によって、投資主の価値が向上する事に繋がります。
ちなみに2016年Jリートの取得事例をみると、購入価格が全て鑑定価格以下となっており、平均で4%ほど物件価額が安く購入出来ています。

もっとも、運用が巌しいマイナス金利時代に、銀行の余資や、緩和マネーの利回りが高い運用先を求めて、不動産投資市場に殺到するなかで、Jリート業界だけが市場において割安価格で収益不動産が購入出来るはずが在りません。
それが当り前なのに、購入価格と鑑定価格が余りにもかけ離れていると売主の懐事情(実際問題、債務処分売りや事業の清算)や売却目線(実際に、一山で何ぼのバルク買いじゃないのか)が気に為ります。

こうした中で、とあるJリートの間の物件売買が市場の注目を集めました。
買主は、大阪市所在のオフィスビルを鑑定価格20,1億円に対して5%安い19,1億円で取得しました。
価格は置いといて、通常であれば何の変りもない取引ですが、今回は売主もJリートでした売主は、そのビルを実際の鑑定価格14,7億円に対して30%高い19,1億円で売却したと発表しました。

まるで、商売人の心得で言う「売り手もよし、買い手もよしで、世間もよしだ」を地でいく、商売人同士の阿吽の呼吸の取引に為っていました。
一般的に、不動産の収益還元価格は、純収益を還元利回りで割ることで簡便的に求めます。

その事例のJリート双方の鑑定評価格を比較すると、還元利回りが4,4%で一致する一方で、純収益が36%も乖離しています。

その主な内訳は、不動産が毎年稼ぐ収益の運営純収益(NOIと言います。差引納税前利益です)が16%で、不動産投資額である資本的支出(無借金経営なら現金買いですが、先ず増資や融資の様な配当や利子付で調達します)が21%です。
このように、資本的支出の見立ての相違が鑑定価格に影響したことが分かります。

再度、基本的に資本的支出とは、収益率上げる為に不動産の価値や耐久性を増すことに対応する後の二次・三次の投資も含みますので、取得後の支出である10年毎の空調設備の更新や、EVや、共用部のリニューアル工事や内外修繕工事なども該当します。
資本的支出が減少(増加)すると純収益が増加(減少)するため、鑑定価格が上昇(下落)する事に為ります。

その点が、盲点だったのです。
しかし、純収益を増やすために資本的支出の投資を、無理に削減した場合(修繕しない場合)、それが原因で、先でテナント賃料や稼働率の低下によって運営純収益が減少してしまいます。
かえってそれが原因で、先の出ロ戦略で取得価格の下落(値切られる)を自分で引き起こす可能性が出て来ます。

収益不動産の長期保有を前提に、不動産価値の最大化を目指すJリートにとって、経年と共にやって来る物件維持増加支出の「資本的支出」管理は重要な経営課題(配当利回りが高い様に見せると、リートに投資が増えます=一般の投資家は上場企業Jリートの性善説で視ています)であり、それゆえに、Jリートにも鑑定評価の透明性が求められます。
今回の事例で、買主は売主の想定より資本的支出を抑制し、かつ収益を高められると判断し購入を決断しました。

通常、それが収益不動産運用の腕の見せ所でもありますので、今後の数値に注目点が在ります。

リーマンショック後に、ファンド売買(信託受益権、現物渡し)において、鑑定評価の在り方が分りました。
要するに、取得の為の意向で創られた不動産鑑定書であり、ファンドの方針が映った評価額に為っています。
凡そ、鑑定額と売買金額が一致しています、鑑定士が合わせています。
ただ、処分売りの場合には鑑定額以下の売買が今でも仰山在ります。

その、取得後の修繕工事の資本的支出額に付いて、Jリートやファンド取得の際に、通常の一般の業者の収益不動産売買説明書類と違い、詳細な数値文書が貰えます。
詳細資料が500頁に及ぶ事も在りますので圧縮ファイルで送信して来ます。
単なるレントロール以外に、10年間収支明細(資本支出予定明細も記載しています)等も添えて在るので、取得側が事前に自分で投資の妥当性が隅々までも精査出来る様になっているのです。

しかし、買主と売主の鑑定価格(20,1億円v.s14,7億円)はどうして大きく乖離したのでしょうか、双方の開示資料からその要因を確認したいと思います。

今までの不動産投資の枠にとらわれない目線で不動産投資を再考し、オーナー利益の最大化を目指します。
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