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【プルマガα】英EU離脱の歴史的軋轢(島国根性か家族主義が勝つか)(寄稿35回目)
Posted on 2016年10月20日
プルマガα35
最近プルマガαの頻度が上がっておりますが原稿が溜まっておりペースを上げざるを得ない状況になってしまいました。
また、若干旬な情報ではないとのご指摘を受けましたが来月には週1ペースでの配信に戻ると思いますのでもう暫くお付き合いの程、宜しくお願いします。
それでは来月決済案件の商品化が確定してきておりますので御連絡致します。
多摩市1棟、相模原1棟、松戸1棟、名古屋1棟、富山1棟、郡山1棟、札幌2棟です。
上記物件は今週末より販売開始の物件となりますので是非弊社へご来社下さい。
それではプルマガαに入らせて頂きます。
今後、英国とEUとは、短くとも2年完結までは7年もかかるとされる離脱交渉に入ることに成ります。投票結果の後、英国ポンドを中心とする世界の為替、株式、資金等、金融面の不安定が世界的な規模で生じています。日本に付いて言えば円相場の高騰株価の下落がみられ、実態経済面でも今後の経済の停滞が懸念されています。
今後の金融経済を予測する為には、先ず、この英国とEUとの交渉がどういう経緯をたどり、どういう決着をみるかを予測する必要が在ります。
その予測のためには、今回英国が離脱を選択した背景は何かについての経済、政治、歴史各方面からの総体的な把握が必要に成ります。
歴史的にみれば、英国のEUへの加盟は、英国と、ドイツ及びフランスを中心としたヨーロッパ大陸国との長い軋轢と折衝の結果で在ります。
その歴史的過程は英国に因る欧州に対する当初の過小評価、再評価後の方針変更、そして欧州への仕組みへの加入、その中での可能な限りの例外的取り扱い確保の過程が在りました(英国は単に欧州を経済パートナーだけの位置づけで、欧州との賃貸契約で間借りしているだけの決して和せずの感覚でした)。
EUは関係国の政治及び経済の統合を究極の目的としていますが、それは突然出来上がったものではなく、第二次大戦後の欧州大陸諸国の長い一体化の歴史を経て成立したものです。その起源は1951年の、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクの6カ国からなるECSC(欧州石炭鉄鋼共同体=第二次世界大戦の反省で戦争防止の為の共同の資産管理)です。これより国家建設の基本的素材である鉄鋼と石炭についての協力体制が確立されました。ときの英国の指導者達は、その内部検討文書に依ると、このECSCはうまくいかないと判断したとされています。然し、これら6カ国は58年には、EEC(欧州経済共同体)を発足させました。
EECは関係国の経済取引の一体化を進めようとの目的であり、これら6ヶ国の間の関税を廃止し、非メンバー国に対しては各国とも同じ関税を課すことにする、いわゆる関税同盟であると言うものでした。
英国はこのEECがかなり進展した60年に、マクミラン首相の下で第二次大戦後の世界の政治経済情勢を再検討し、その結果欧州大陸諸国への政策を改めることにしました(又もや後出しじゃんけんです)。そして同年英国はEECに対抗してスウェーデン、ノルウェー、デンマーク、オーストリア、スイス、ポルトガルと共にメンバー国の取引に関税を課さないとするEFTA(欧州自由貿易連合)を創設しました。
ところが英国は73年、デンマークと共にEFTAを脱退しEECの後継であるEC(欧州共同体)のメンバーと成りました(三度目の何とかです)。関税同盟であるEECは67年に経済全体を一体化するECに発展していたのです。
英国のその加盟は円滑に行われたわけではなく、その加盟申請は2回にわたり時のフランス大統領により実はNOに成っていました(感情も在ります、英国の今迄のふらふら変遷の島国根性が信用出来ないからです)。
英国のEC加盟決定論理は、英の加盟はECの経済規模の拡大を意味するものですから、その点にフランスやドイツも当然歓迎すべきものだろうなと言うものでした(英国は欧州を舐めています)。実は、英国は欧州大陸諸国の意向を読み違えました、そう何度も煮え湯を飲まさせるお人好しECでは在りません。
EU(欧州連合)は1993年11月、その基礎となる欧州連合創設定めた条約の発効により、当時の英国を含めたECメンバーである12カ国で発足でした。
EUに関して英国は原加盟国ですが、英国は現在もそのEUの仕組みの中で幾つかの点で異色の存在となっています。何よりも英国はEU共通通貨である「ユーロ」の構成国では在りません。現在EU加盟の28カ国中19カ国は「ユーロ」のメンバーですが、EU主要メンバー国である英国はこれに参加しておらず、自国通貨である「ポンド」を持っています。この共通通貨であるユーロの19カ国の金融政策はECB(欧州中央銀行)が当然同一の政策を実施していますが、英国の金融政策はその中央銀行であるイングランド銀行が行っています。
他方、この欧州中央銀行ECBはEU全体の中央銀行の側面も在りますから、英国はEUの加盟国としてEU内の金融分野の大まかな政策については相応の発言権を持っています。しかも英国は、EUの金融制度を所轄するEU金融委員会の議長を伝統的に務め、大きな影響力を行使しているのです(何とも不可解な金融二重構図です)。
※そのEUの不可解な金融構図の展開にわが国は一喜一憂してはいけません。英国EU離脱の背景についてもう一つ重要な点は、英国がEU問題をこれまで主として自国の経済と特に貿易との関係で評価して来ており、それが経済のみならず政治と外交及び広く社会全体にかかる問題として評価してこなかったことに在ります(ここが、離脱支持派の最大の誤解でした)。離脱投票のキャンペーン中でEU加盟存続派はEUの加盟国であることに伴う雇用の拡大、EUの加盟国との貿易取引の多さ等(中國です)をその英国への国益に挙げました他方英国内EU離脱支持派は、英国の貿易取引の相手方としては中國やインドをもっと活用すべきだとか、米国やカナダとの関係を強めるべきだとか、更には旧英連邦諸国が在るじゃないか等と存続派に反論しました。(故に離脱派首相は、早速中國原発導入を白紙化との発言です)。
今も英国の世論をみる限り、EUとの関係を貿易取引との関係でとらえるというこの英国民の基本的な視点は変わっていません。他方、EUは第二次大戦後現在の姿にいたった経緯に鑑みても、またEUを規定の1991年に起案された「マーストリヒト条約(オランダの都市マーストリヒトで連合草案を合意しました)」をみても、EUは貿易や経済の共同体以上のもので在ります。条約によれば、その目指すところは「経済・通貨統合、政治統合、内務・司法面の協力」等です。
離脱派の主張の大きな根拠にEUから離脱して「英国独自の主権」を回復して、外国からの移民を制限しうるようにしようと言うものが在りましたが、これもそもそもEUへの加盟自体が各国の固有の主権を一部放棄して共同体を作ろうと言うものであることについての理解が、当時から英国民に薄かったことを物語っています、ゆえに今回の離脱思想はその延長線上に初めから在ったのです。
こう言う陸続きの欧州は皆家族主義のヨーロッパ諸国と、島国根性の英国の見解の相違は更に根深いものが在ります。ある英国の識者は第二次大戦が英国にとっては単に「戦勝国」となったことであったが、欧州大陸諸国にとっては強国として生き残る為には「共同体」によるしかないという結論だったとしています、実に的を射た自省の弁で欧州の将来を見据えた格言でした。
以上のようにみると、今後の展開は格段に複雑です。英国を始め関係当局は、国内での議論を整理した上で国内世論の動向を睨みつつ離脱の交渉をしなければなりません。当事者の一方である英国は、国として独立した存在でありますが、相手方であるEUは国家としての一定の権限は加盟国から移譲を受けてますが、残された権限は依然として構成する27カ国の手元に在ります。
従って離脱を完結し、離脱に代わるべき新たな今後の関係確立がされるためには英国とEU、そして英国と27のEU加盟国との間の複雑な交渉、おびただしい数の条約取り決めが必要と成って来ます、しかも予定は2年です。そして、ドイツは離脱決定後に早く離脱する様に英国に迫っています。然し、この交渉は長期化しますし、この間に金融面・実態経済面で多くの不安定と安定とがくりかえされる事に成るのは必至です。
日本はどう備えるべきでしょうか。最も大切なことは今後伝えられるであろう英国とEU間の個々の交渉の進展に一喜一憂したり、過度の反応をしたりしないことです(欧州の半世紀に及ぶ共同体思想は成る様に成るのです)。
然も、欧州情勢のニュースが正確に入るとの保証は在りませんし、各種のメディアを通じて提供される解説が正しいものとは限りません。2008年のリーマンショックの時のように、個々の悪いニュースに過剰に反応して主要国の中で金融機関の受けた傷が格段に浅かった我が国が、逆に先進主要国の中で最大のマイナス成長率を記録したと言う愚行愚を決して繰り返してはいけません。
第2に、欧州における貿易投資環境についての観点です。英国を中心とする多国間交渉は、結局は現在のEUの制度を基本に行われるはずです。
そしてその基本は英国が離脱後も、現在EU加盟国から受けている便益をどの程度受け続けられるかということになります。だとすれば、ヨーロッパにおける企業や特に製造業の拠点の場所としては、迷ったらEUのメンバー国内を選択することが無難だと言うことになります。
第3に、金融面についての観点です。EU離脱後も世界の金融政策の主役が、現在と同様、米国のFRB・ユーロ圏ECB・日銀・イングランド銀行の4行であることに変わりは在りません。金融政策にこれに由来する大きな変化は考え難いのです。ただ、英国離脱が本来的に経済、金融の不安定要因であることから、現状では金融政策への負担は更に強まることが懸念されます。
また、財政政策についても、英国がその財政黒字の2020年の回復を諦めたように健全化政策の後退がみられるでしょう。
第4に、ロンドンの金融センターとしての位置づけが変わるかどうかの観点です。
市場取引はダブリンかルクセンブルクに、大型取引はフランクフルトかパリに移る可能性があると言われていますが、金融センターたる由縁はこれらの取引が1ヶ所で行われることに国内と国際的な存在意義が在ります。その各種インフラの整備状況からみてもロンドンの地位は大きくは変わらないと思います。
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