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【プルマガα】2017年に入り、実需が伴わない貸家増加が顕著に(寄稿62回目)
Posted on 2017年04月11日
貸家の着工戸数は2015年7~9月期に40万戸と、消費増税前のピークの2013年10~12月期38万戸を上回った後で一時的に落ち込みましたが、年初からは増加を続け持家分譲住宅との差も一段と広がりを見せています。
その貸家の着工が何故急増していのかの要因について考えるとともに、今後の住宅着工の動向視ます。
まず、最近の貸家着工戸数の変動要因を定量的に測るため、貸家着工戸数に金利や住宅ストック在数や消費者の動静マインド等の状態を察してみます。
2012年までは実績と推計がほぼ一致していますが、その後2013年後半からは実績が推計を上回る状況が今も続いています。
特に、2013年10~12月期から2014年1~3月期、2016年4~6月期から7~9月期までの期間は推計値を大幅に上回っています。
まず、実績と推計が乖離の原因として考えられるのは、2014年4月の消費増税に関わる駆け込み需要とその反動の影響でした。
駆け込み需要が発生したと考えられるのが2013年4~6月期から、2014年1~3月期にかけてで、実績が推計を上回る状況が続いていました。
その点は消費増税前の駆け込み需要の影響があった可能性を指摘できます。
しかし、消費増税後も実績が推計を上回る水準で推移しており、反動減が視られていないのです。
消費増税後の反動減が緩和された要因として想定されるのが、2017年4月に予定されていた消費増税前の駆け込み需要です。
貸家着工戸数は2015年7~9月期の時点で推計との乖離は見られませんでしたが、10~12月期以降の実績が推計を上回るペースで増加を続けて、推計との乖離は2016年1~3月期で2万戸増程度、4~6月期で6万戸増程度と拡大の傾向に在ります。
このように、年明け以降にも見られる住宅着工の回復の動きは、消費再増税を見込んだ駆け込み需要によって、一定程度の説明できると考えられました。
ただし、現場の住宅販売会社の駆け込みに関するコメント数を前回と比較すると明らかに少ないのです。
消費再増税の時期は2016年6月に、2019年10月への先送りが決定されていますが、国内景気の回復の遅れを理由に早い時期から先送り観測が高まっていたことと、前回の消費増税時の需要の先食いによりのちの減少が発生したことなどから、消費再増税を見込んだ駆け込み需要の規模はそれ程大きくなかったものと考えらます。
消費増税後も実績値が推計値を大きく上回る状況が続いている要因として、2013年度税制改正による相続税増税(2015年1月実施)が指摘できます。
基礎控除の引き下げ、税率構造の見直しにより税負担が従来に比べて重くなったために、節税需要が高まったものと考えられます。
相続税は相続する財産が金融資産か不動産かによって評価方法が異なり、相続税額に差が生じます。
例として、2億円の金融資産をもつ被相続人が、法定相続人1人に相続する際に、相続財産がそれぞれ金融資産や不動産である場合の相続税額を概算してみます。
まず、金融資産で相続する場合に、課税対象となる相続財産の評価額はそのままの2億円となります。
次に、1億円の土地を購入して、その土地に1億円の貸家を建設して相続させる場合を想定します。
土地の課税評価額は、路線価(実勢価格の凡そ80%程度)で評価されるために、ここでは8000万円と仮定します。
この土地に、貸家を建設すると借地権割合(80%)と借家権 割合(30%)を乗じた価額が控除されて6080万円の評価額となります。
一方で、貸家は一般的に建築費の6割とされる固定資産評価額から、借家権割合(30%)と賃貸割合(100%)を乗じた分が減じられる為4200万円となります。
土地と合わせた課税評価額はおよそ1億円で、金融資産を相続する場合に比べ半分程度の納税額が減額されます。
更に土地面積が200㎡以下の場合、小規模宅地等の特例が適応されることにより、土地の評価額が50%減額されるため、課税評価額は7240万円に低下します。
以上から貸家建設による節税効果を試算すると、
改正前でマイナス3764万円(金融資産3900万円 → 土地・貸家(特例適用)136万円)ですが、
改正後はマイナス4332万円(金融資産4860万円 → 土地・貸家(特例適用)528万円)で大きくなります。
上記の例では、相続財産を2億円としましたが、相続財産が2億円以下から2億円超、3億円以下から3億円超、6億円以下から6億円超に変わる場合は、基礎控除の引き下げに加えて、新たな税率が適用されます。
これらに該当する場合は、節税がより強まるものと推測されます。
この様に、住宅着工戸数は貸家中心に堅調に推移しています。
しかしながら懸念材料もみられています。一つが空室率の状況です。
空室率推移をみると、東京都を除く地域では今年に入り上昇基調が明確となっています。
こうした実需を伴わない着工の急増は、相続税増税に伴う節税需要の高まりによって押し上げられている面が大きく、いずれの時に調整する局面を迎えることは避けられません。
また、今後、中期的には人口動態が住宅着工に与える影響も懸念されます。
年齢別に世帯の持家・借家比率をみると、民営借家に住む比率は年齢層が高くなるにつれ低下する傾向にあります。
すなわち、貸家民営借家の需要は39歳以下の世帯数規模の影響を受けやすいことを意味しています。
人口予測で、2016~20年の25~39歳以下の人口は3009万人と、2011~15年の3327万人に比べて320万人減少すると予想されています。
とりわけ、30~39については、団塊ジュニア世代が40歳代へ移行するため、大幅に減少しています。これにより持家の需要が高まる反面で、賃貸住宅需要が減少する事が見込まれます。
以上から、先行きの住宅着工戸数を見通すと、引き続き節税需要の高まりが支えとなることが予想されます。
ただし、それが今の実需を伴わない貸家の着工は、絶対に高水準を維持することが困難であり、いずれの時に調整を余儀なくされる蓋然性が在ります。
また中長期的には、人口動態の変化が住宅需要の変化をもたらす可能性もあります。
住宅着工の先行きを展望する上で、こうした構造的な変化をリスク要因として認識しておくべきですが、最終的には投資アドバイザーであるプルアップが実需に根ざした1棟マンションを運営支援致します。
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