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【プルマガα】2017~18年欧州経済見通しとイギリスEU離脱(寄稿74回目)

Posted on 2017年06月9日


もうすぐイギリスのEU離脱決定より1年です。

保護主義と今迄の移民政策の除外掲げる右勢力の台頭は、EU主要国に連鎖して、各々国で議員数が急増し難民受入が巌しい流れに在ります。

思いもしないイギリスのEU離脱決定で、世界が今後の金融市場の動静見通しに不安抱いて、決定1週間後にはロンドンの収益不動産市場や英リートが暴落したので、世界の金融都市ロンドンよりEUに移転表明する銀行が出て無用な混乱が始まりました。

また、イギリス産業部門でトヨタと日産はイギリスでの生産継続方針を示しましたが、メイ英首相がEU単一市場から撤退する計画を発表したので、欧州において製造業の輸出拠点としてイギリスの魅力はやや薄まる可能性が在ります。

上述の無用な混乱とは、1年経てイギリスのEU離脱手続きが延々と交渉が進んでいない点に、市場が離脱決定当初より想いが及んでいない事です。
離脱交渉はお互いに良いとこ取りし合うので、スムーズに運ぶ分が在りません。
今後も交渉に数年間要します。

その協議において、イギリス(島国精神の持主)と欧州(大家族主義思想の伝統)の間で、易々と事案が合意する分が在りません。


【1】ユーロ圏は、緩和的金融政策と拡張的財政政策に支えられた個人消費主導の成長(内需内大)が続いています。
個人消費は、エネルギー・原油価格上昇で2017年は勢いこそ鈍りますが、雇用と所得環境の改善に支えられさらにGDPの拡大が継続します。
企業の固定資産投資は、やや過剰な債務や先行きの不透明感が未だ在りますが、全体的な企業の業績好調や生産高稼働率を背景に回復基調が今後とも維持されそうです。

ユーロ圏の実質GDPは、17~18年とも前年比1.5%増、インフレ率は17年1.7%増、18年に1.5%と予測されています。
欧州中央銀行ECBの著しく緩和的な金融政策は、今後とも引き続き必要とされていますので、低政策金利は据え置かれるものと察せられます。

見通しで唯一のリスクは、数年来のEU内イスラム過激派のテロの多発に怒る極右・大衆迎合主義勢力の政権掌握と、米国新政策に在ります。
フランス大統領へのルペン氏選出には、欧州にとってイギリスに因るEU離脱等の公約実現の可否を超えた重い意味が在ります。
永年の移民政策により国体そのものが護持されて来たフランスが移民受入制限するという言い分です。

イギリス経済は、EU単一市場・関税同盟離脱による不透明感=不安感(誤った情報に因り無知と成り、妄想詭弁招いてしまいます)やポンド安、そして原油価格上昇で自然にあらゆる分野のインフレで鈍化するものと見做されます。
EU離脱は、未だ最終的な着地点も、今後の相互の政治交渉・判断次第であり、進捗状況に不確実性が高いものと想います。

ユーロ圏では、著しく緩和的な金融政策とやや拡張的な財政政策に支えられた個人消費主導の成長が続いています。
3月7日公表の10~12月期の実質GDP(確報値)は前期比0.4%、前期比年率1.6%で、内需主導の緩やかな回復持続が確認されました。

外需は0.1%の成長を押し下げました。
輸出が前期比1.5%増と回復したものの、原油高で輸入が同2.0%と輸出の伸びを上回ったためでした。

他方で、内需は主要項目のすべてが成長に貢献しました。
個人消費は、雇用・所得環境の改善に支えられ、7~9月期の欧州中央銀行(ECB)の包括的金融緩和策で金融環境は一段と緩和的になり、圏内全体で見れば銀行の資本の強化も進展しています。

さらに、投資の抑制と需要の回復が続いたことで、設備稼働率も長期平均を上回る水準に達しています。
それでも、投資の足取りが重いのは、企業部門の過剰債務の解消が進んでいないことに加えて、未だ先行きの不透明感が重っているものと思われます。

16年末から世界経済の回復の影響もあり、EU圏の景気拡大ペースは加速しています。
実質GDPと連動性が高いユーロ圏総合数値が6年振りの高水準となったと公表されています。

インフレ率も、ゼロ近辺での推移が続いていますが、原油価格が前年比上昇に転じると上向き、2月速報値は2%に達しました。
2月は原油価格が前年同月比9.2%上昇したことに加えて、食品価格も天候不良が響き、同2.5%上昇しました。
食品・エネルギーを除くインフレ率は同0.9%で1月と同水準でしたが、サービス価格は同1.3%と1月の同1.2%を上回っていました。

16年のドイツの実質GDPは前年比1.9%と堅調さが際立っています。
失業率は17年1月には3.8%まで低下しました。
フランスは同1.2%と拡大のペースが緩慢の侭で、失業率は10%と低下基調がなかなか定着しません。
2015年よりの悪い流れの侭にいます。

スペインは15年に続き16年も3.2%成長と速い回復ピッチを保っていました。
スペインの失業率の低下もさらに進ましたが、まだ失業率が18.2%でギリシャの23%に水準はEU圏の中でギリシャに次いで2番目に高い侭です。

イタリアの実質GDPも15年は0.8%、16年は0.9%とようやく緩やかな拡大が続くようになりました。
失業率は11.9%と高止まりの侭です。

失業率の水準には、ユーロ参加国間で大きなばらつきが在ります。
しかも、殆どの国で世界金融危機前の水準を上回る状態となっています。
その広がりの根底には、世界金融危機とEUの債務危機による二重の打撃の後で、成長・雇用の回復ペースが鈍く、失業問題に有効な手立てを打てないことが在ります。

17~18年も緩和的金融政策と財政政策に支えられた個人消費主導の成長が続くと見做されます。
年間成長率は1.5%と予測されます。
個人消費は、原油価格の上昇が実質所得の伸びを抑えますので勢いは鈍りますが、雇用・所得環境の改善に支えられ消費拡大が続来ます。

欧州中央銀行は、デフレへの対応として14年6月からマイナス金利と、資産お買い入れや資金供給緩和策を強化中です。
ユーロ圏の経済拡大ペースがやや緩やかで、過剰債務の圧力もあるので、投資回復が弱いのです。
更に著しく緩和的な金融政策が必要とされています。

でも、その見通しのリスクは大きく2つ在ります。
1つは、3月15日のオランダ総選挙を皮切りとする主要国の国政選挙で(右派の台頭がやや抑えられました)EU離脱や、さらにユーロ離脱を公約に掲げる極右大衆迎合主義政権が誕生したらEU内の政策が混乱するリスクが在ります。

もう1つは、米国のトランプ政権の政策期待の剥落や保護主義的通商政策、連邦準備制度理事会FRBの利上げにより、EUに投資の資本がアメリカに流出する加速で、いま持ち直しつつある新興国の景気が再度失速するなどの影響がユーロ圏に及ぶリスクです。

米国の政策については未だ不確実な面が多いですが、既に影響が大統領選挙後の米国の長期金利の上昇に連動したユーロ参加各国の長期金利上昇に表れています。
フランスやイタリアなど政治動静のリスクが警戒される国では投資流入が細る蓋然性が在ります。

16年のイギリス経済は、6月の国民投票でEUからの離脱を選択した後、事前の観測とは裏腹に、成長ペースが加速しました。
年間の実質GDPは前年比1.8%と巡航速度を保っています。
イギリス経済が、景気が減速しなかった理由として、離脱ショックによるポンド安が輸出、観光にプラスに働いたことが指摘されます。

実際、10~12月期は輸出が前期比4.1%、輸入が同0.4%減で、外需が最も大きく実質GDPを押し上げていました。

但し、7~9月期は輸出が減少、輸入が増加しています。
観光の押上げ効果についても、海外居住者のイギリスへの訪問者数も増加していますが、その支出は少なくとも統計上は、前年とほぼ同程度の水準にあり、堅調持続の主要因とは言えません。

内需が離脱国民投票直後に一気に冷え込んだ後、一旦戻しています。
理由は、政府が直ちにEU離脱手続きに進まずに、また今年1月のメイ首相の演説まで、EUは離脱しても財やサービスや資本や人間の移動の自由を原則とする単一市場EUに残留するのではないかという期待が続いたことが在ります。

しかし、1月にメイ首相が示したのはEU離脱ばかりでなく、単一市場さらに関税同盟からも去る離脱戦略でした。
離脱協議の起点となるEU首脳会議への離脱意思の通知も当初予定よりも時期は遅れる見通しです。
しかし、英議会では下院に優越権があり、下院が上院の修正案を否決した場合に、上院が再修正を求めることはなく、政府が目標としてきた3月末までの通知を妨げることはないと見られています。

今後は、EU離脱が現実味を帯びることが、投資や雇用に影響を及ぼし始め、内需の伸びは鈍化します。
景気の減速が見込まれる一方、資本流出によるポンド安にも配慮が必要です。

今回の見通しでは、19年3月にEUを離脱し、離脱後は将来の包括的な自由貿易協定FTA視野に、段階的にイギリスがEU市場へのアクセスを失うものと見做されます。

1つはっきりしていることは、イギリス政府が描くFTAの大枠を2年間でまとめて、離脱と同時に移行期間に入るのが、かなり困難ということです。

離脱派の政治家が主導した英国のEU離脱戦略の実現可能性については、通商交渉の経験者や、実務家、規制当局者らは懐疑的の様です。
EUとの協議の結果、離脱のコストが大きすぎることが段々と明らかになり、離脱の是非を改めて質されて離脱が否決されると言う様な想定専門家はごく少数です。
しかしながら、離脱断念するかもしれないという思いを抱いている専門家も決して少なく在りません。

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